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宇宙や運命に対して人間の尊厳を普遍的な視点で示した1つの考え(言葉)を紹介します。

 

「人間は自然のうちでも最も弱いひとくきの葦にすぎない。しかしそれは考える葦である。これをおしつぶすのに、宇宙全体は何も武装する必要はない。風のひと吹き、水のひとしずくも、これを殺すに十分である。しかし、宇宙がこれをおしつぶすときにも、人間は、人間を殺すものよりもいっそう高貴であるであろう。なぜなら、人間は、自分が死ぬことを知っており、宇宙が人間の上に優越することを知っているからである。宇宙はそれについては何も知らない。それゆえ、われわれのあらゆる尊厳は思考のうちに存する。われわれが立ち上がらなければならないのはそこからであって、われわれの満たすことのできない空間や時間からではない。それゆえ、われわれはよく考えるようにつとめよう。そこに道徳の根原がある。」

 

『L’homme n’est qu’un roseau, le plus faible de la nature ; mais c’est un roseau pensant. Il ne faut pas que l’univers entier s’arme pour l’écraser : une vapeur, une goutte d’eau, suffit pour le tuer. Mais, quand l’univers l’écraserait, l’homme serait encore plus noble que ce qui le tue, puisqu’il sait qu’il meurt, et l’avantage que l’univers a sur lui ; l’univers n’en sait rien.
Toute notre dignité consiste donc en la pensée. C’est de là qu’il faut nous relever et non de l’espace et de la durée que nous ne saurions remplir. Travaillons donc à bien penser : voilà le principe de la morale.』

 

「人間は考える葦である」は、フランスの17世紀の思想家・数学者であったブレーズ・パスカルの手稿にあった言葉だといわれています。(『パンセー Pensee(思索)』という著作のなかの言葉だという誤解も一部浸透しているようですが…)パスカルは、人間/世界/神 などの秩序や矛盾について、系統的な考察を極め体系的な浩瀚な著作を著すことを計画していたのですが、その内容に関するメモを多数残しただけで、構想段階で完成させず若くして40代で亡くなりました。残された膨大なメモを元にパスカルが計画していた著作に似たものを編集することも考えられたのですが、それはとても困難故その断片集として、計画のまとまりや内容の関連性などおおまかかつ断片的なメモを整理してまとめ一冊の本に編集した、それが『パンセー』です。(パスカルの死後出版)

 

風が少し吹いただけで、前屈して曲がってしまう葦。けれども風が去ると、また元のように立ち上がる。人間とはこのように、自然や運命の暴威に対し無力であるがそれに対して従順な存在、またその暴威をくぐり抜けて元のように、自らの力で立ち上がることもできる。運命にも暴威にも屈しない、けれども「考えることができる」すなわち「精神を持つ」ことで、ただ自然の力を暴威として無自覚に揮う風と較べて、遙かに賢明で優れた存在である。  
だから、「人間とは運命に従順であるが、しかし精神で運命に抵抗し、不屈の意志で思索することで、運命や自然の暴威を乗り越える自由の存在なのだ」という意味でこの言葉を記したのでしょう。